営┃業┃革┃新┃の┃急┃所┃
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◆第30号◆

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■■■■■■ 今回のテーマ ■■■■■■
 
【行動分析学を参考にした部下への関わり方:その2】
 

執筆:ジェイック営業コンサルタント 林丈司(はやし じょうじ)
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こんにちは。
今週も営業革新の急所をお送りします。

今回は前回に引き続き、“行動分析学”を参考にしながら、
営業管理職から部下への関わり方を考えます。

前回から3週間空いてしまったので、まずは簡単に振り返りから。

 ●リーダー次第でその組織は決定される

 ●上司は“個人攻撃の罠”に陥りやすい

 ●この罠に陥っている限り、部下は育たない

 ●部下の態度や意欲は、他人である上司の手には届かない

 ●行動分析学は、心ではなく“環境”に介入することで、
  その人の行動がどう変わるかを研究した学問

 ●この考え方を身につけると、部下の行動に問題がある場合、
  それは本人だけでなく、“関わっている上司の指示の出し方・
  関わり方等にも原因がある”と考えることができる


どうでしょうか。
思い出していただけましたか?

改めて前号を読みたい方は、こちらでご確認ください。

⇒⇒⇒⇒ http://www.jaic-g.com/mailmagazine/index.html

では、今週号の始まりです。

■強化の原理と弱化の原理
 
行動心理学では、他人(上司)が関わって、
どのようにその人(部下)の環境を変えれば良いのかを考えます。
この点を正確にお伝えするためには、
強化の原理と弱化の原理を説明しておかなければなりません。


▼強化の原理
============
 ある行動をとることで、何か良いことが起こったり、
 悪いことがなくなったりすると、
 その行動が強化され繰り返されるということ


 例えば、家族で食事をしているときに、父親が駄洒落を言います。
 すると、普段は父親をあまりかまってくれない娘が、
 ツボにはまって大笑いしました。結果、強化の原理が働いて、
 父親は更にくだらない駄洒落を言うようになります。

         ※我が家のことではありません、念のため

 このように、行動を強化する“何か良いこと”を好子(こうし)といいます。
 上記の場合、娘が大笑いしたことが好子になっているわけです。

 企業組織で例えれば、ある好ましい行動をとった部下を
 上司が褒める(好子)ことで、その行動を部下に繰り返し取らせるよう
 強化することができるワケです。


▼弱化の原理
============
 強化の原理とは逆に、ある行動をとることで、
 何か悪いことが起こったり、良いことがなくなったりすると、
 その行動が繰り返されなくなるということ


 例えば、飲み会で、つい調子に乗って下ネタを話してしまいました。
 結果、女性から嫌われてしまい、視線が冷たく感じたとしましょう。
 これは「下ネタを言う」という行為が弱化されるため、
 以降この人は飲み会で下ネタを言うことがなくなる、ということになります。

         ※これも絶対私のことではありません、念のため

 行動を弱化する“何か悪いこと”を嫌子(けんし)といいます。

 言うまでもなく、ある行動を取る(取らない)部下を
 厳しく叱責することは、嫌子として働きます。
 しかし実は、嫌子を多用するマネジメントはあまり効果的ではない
 と言われています。
 なぜなら、嫌子を多用すると、

  ●怒られるのを避けるために失敗を隠したり
  ●上司から見える場所で行動を変えるだけだったり
  ●水増しの報告を増やしたり

 するようになるからです。

 営業マンに対して、

 「なんで毎月見込み案件が少ないんだ。1ヶ月何やってたんだ!」

 と叱ってばかりだと、実際は到底受注できそうもない案件を、
 高い見込みとして報告してしまうのはこのためです(笑)。
 つまり、見込み案件の水増し報告です。
 (これは「心理学上当然のこと」ということになります)
 御社では心当たりありませんか?


■行動随伴性とABC分析
 
強化の原理や弱化の原理が働くときは、たいてい
「〜のとき、〜したら、〜になった」という関係が成立しています。

●「〜のとき」は先行条件(A:Antecedent)
  行動が起こる直前の環境のことです。

●「〜したら」は行動(B:Behavior)

●「〜になった」は結果(C:Consequence)
  行動の直後に起きた環境の変化のことです。

先の例では、こうなります。

先行条件A : 家族で食事をしているとき
行動 B   : 駄洒落を言ったら
結果 C   : 娘が大笑いした

先行条件A : 飲み会のとき
行動 B   : 下ネタを言ったら
結果 C   : 女性から嫌われた


営業マンでは、例えばこうです。

先行条件A : 明日の訪問の準備をしているときに
行動 B   : 自分で徹底して考えた作戦を上司に報告したら
結果 C   : その姿勢を褒められた

 ⇒強化の原理が働いて、更にコミュニケーションがよくなる


先行条件A : 飛び込み訪問の際
行動 B   : 元気良く相手に挨拶したら
結果 C   : 冷たくあしらわれた

 ⇒弱化の原理が働いて、飛び込みの挨拶がどんどん弱気になる


このA、B、Cの関係を行動随伴性といい、
行動随伴性を分析する事をABC分析といいます。
(商品や顧客分析に使われるABC分析とは全く別のものです)

このABC分析をすることで、

 ●ある人が望ましい行動を起こさない理由
 ●ある人が望ましくない行動を起こす理由

を推測でき、

 ○部下を動機付けし
 ○育成するための今後の行動

をより明確にすることができます。
 


■上司は部下のどこに関われば良いか
 
なんだか今回は難しい話が多くなってしまいました(笑)。

行動分析学を頭に入れて部下に関わるということは、

 部下の行動(B)の直前・直後の環境(AとC)に
 目を向け関わっていくことで、部下を育成する


ということです。

う〜ん・・・・。
まだ、私が伝えたい肝心のところを説明しきれていません。

ということで、具体例はまた次回に譲ります。
私がホントに書きたかったのは、次回の部分なのです。

私は、管理職の方々が部下を育成するのに、
非常に大きな効果を発揮する手法として、
この行動分析学を取り上げているつもりです。

今回はちょっとわかりにくい話になってしまいましたが、
次回を是非お楽しみに。^^                              

 

       参考文献:パフォーマンス・マネジメント   
                 〜問題解決のための行動分析学〜

島宗 理 著
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次回は今回の続きで
 
   「行動分析学を参考にした部下への関わり方:その3」
 
次回でこのシリーズは終わりです(たぶん)。
お楽しみに。

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ありがとうございました。
(執筆:林)
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発行:株式会社ジェイック   http://www.jaic-g.com/
バックナンバーはこちら   http://www.jaic-g.com/mailmagazine/index.html
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