営┃業┃革┃新┃の┃急┃所┃
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◆第25号◆
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■■■■■■ 今回のテーマ ■■■■■■

【あなたは「安くないと売れない」と思っていないか!?】
執筆:ジェイック営業コンサルタント 林丈司(はやし じょうじ)
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第25号の「営業革新の急所」です。
今日の「営業革新の急所」は、営業マン A君B君 が出てきますよ。


ところで、先日仕事で博多に行ってきました。
仕事も終わって時間があったので、とんこつラーメン食べたのですが、
やたらおいしかったです。
そのあと京都でお客様にご馳走になりました。
これもおいしかった。
そういえば、先々週は宇都宮で名物の餃子を三人前食べました。
・・・やはりおいしかった。

どうにも最近おなかが気になってます。
年齢のせい(42歳)もあるでしょうが、
筋肉が落ちてるのにお腹が出てきてしまって。
風呂に入るとき鏡を見ると、まるで鉄人28号のような体型に・・・。
(鉄人28号がよくわからない人は、わざわざ調べなくてもいいです。)

自宅マンションの前に、今月末スポーツジムができるんですが、
通う時間がないなぁ。

・・・すみません、自分はまだまだ若いつもりでいたのに、
最近中年になったのかな、と気づいた人間の独り言でした(笑)。
 
◎さて、今回は営業活動における商品価格の話です
 
私のようにたくさんの営業マンと話をしていると、
売れない理由を、営業活動の様々なステージやケースで耳にします。
そして、一部の営業マンは、この売れない理由を
価格のせいにしたがる傾向があるものです。

例えば、競合に対して価格が高い、とか
いまどきこの価格じゃ売れないよ、とか
もっと原価を下げる努力をしてくれなきゃだめだよ、とか。

そこで、その商品が売れなかったのは

 
●ホントに商品の価格が高かったからだけなのか
●他に理由はないのか

 
というのが今日のメルマガのテーマです。

■A君の価格提示


まず身近な例をあげましょう。

ある会社の営業マンA君に営業同行をしたときのことです。
A君のクロージングは、価格を切り出す態度がおっかなびっくりで
腰が引けたものになっていました。
 
 お客様:「値段はいくらなの?」
 A君 :「(目線がキョロキョロしながら)あ、あの、
       この商品は○○円で販売させていただいております」
 お客様:「あ、そう・・・・(しばらく無言)」
 A君 :「(不安そうに)でも、特別に安くさせてもらいますよ」

 
私は心の中で以下のように突っ込みました。
 
 私の心の中:「い、いったいナニが特別なんだっ。
          それに自分から安くしてどうするっ!」

 
レベルの低い話だ、と笑わないでください。
決して珍しいことではないのです。
なにしろ、ジェイックにもよくこういう営業マンが来るようですから。

 
少しでも自信のない態度で価格提示をするだけで、相手は
「こりゃもっと安くなるな」と確信して値引き交渉に入るものです。
もう一度書きますが、 「少しでも自信のない態度」 ですよ。


 
よく言われることですが、逆に自信のある態度で価格提示をすると、
お客さんは切り込みにくくなります。
試しに、 売れなくてもいいや! と思い切って、

自信を持って価格提示をしてみてください。
乱暴な話ですが、それだけで相手の反応が違うはずです。

 
まぁここまでは初歩ですよね。
(でも、これだけでは大きな問題を見落とすことになります。
 それはあとで解説しましょう。)

■ある宝石店のできごと


いきなり話が変わります(笑)。
 
ここに「影響力の武器」という本があります。
著者は、ロバート・B・チャルディーニという社会心理学者。
“なぜ人は他人から仕向けられてその行動に走るのか” ということについて

心理学の観点から豊富な事例でわかりやすく解説されている本です。

 
この本の冒頭に、ある宝石店の実例が出てきます。
この宝石店では、トルコ石が売れなくて困っていたそうです。
そこでこの宝石店のオーナーは、トルコ石の陳列ケースを
目立つところに移動したり、
店員にトルコ石を重点的に客に勧めるように指導しました。

でも、まったく売れません。
観光シーズンで、来店する客は多いのにホントに売れない。

業を煮やしたオーナーは、出張に出る朝、トルコ石の価格を
1/2にするように指示した殴り書きのメモを置いていきます。

数日後出張から帰ったオーナーは、
トルコ石が全て売り切れていることに気づきます。
しかし、店員から詳しく話を聞いて、びっくり仰天したそうです。
殴り書きの汚い字だったため、店員がメモの読み間違いをしていました。
 
トルコ石が売れたのは、
  価格を1/2にしたからではなく、なんと2倍にした
からだったのです。

チャルディーニは、こう解説しています。

 
トルコ石を買った観光客は、「払った額に見合うものが手に入るものだ」
というルールを聞かされて育っており、それまでの人生の中で
このルールが当てはまることを何度も何度も見てきたのです。
「高価なもの」は「良いもの」だと置き換えるようになったのだと。
そして、この 「高価なもの=良いもの」 という簡便化された考え方は、

現代のような複雑に入り組んだ環境において、
非常に便利なものなのだそうです。
だから多くの場合、人はこの簡便法を使ってしまうのだと述べています。

この本では、他にもたくさんの「影響力の武器」について解説しています。
興味がある方は買ってみてください。
マーケッター必携の著と言われています

「影響力の武器」
ロバート・B・チャルディーニ
誠心書房 3465円
アマゾンに書評が載っています。↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4414302692/ref=sr_aps_b_
/250-8377009-2713811

 
 余談ですが・・・。
私は以前から、営業マンはマーケティングと心理学を勉強すべきだ、
 と言い続けています。
 でも、心理学のほうは、なかなか良い本にめぐり合うことができず、
 研修生に紹介することができませんでした。
 そう、やっとつい最近出会えた素晴らしい本が、
 この「影響力の武器」というわけです。
 読んだことを知恵に置き換えることができる人にはお勧めです。^^



■それでも価格が重要だと言い張るB君


仏壇を販売しているある会社は、
新聞折込で数万円から数百万円の仏壇の広告を出しています。
すると、20点くらいの商品の中で、
上から3番目くらいの100万円前後の仏壇がよく売れるそうです。
これにも価格表示の仕方に心理学的工夫があるのですが、
解説すると長くなるのでやめときます。

言いたいのは、チャルディーニが解説しているように、
人間が購買行動に走る理由の中には
「高いから買う」ということもあるということです。
つまり逆に言うと、
 
「安くなければ買ってくれない」という論理は必ずしも通用しない
 
ということにもなります。
まあ、マーケティングを勉強している人には、
特別目新しいことではないですよね。

そこで、今度はある卸売業の営業マンB君の言い分です。
 
B君:確かに売れるためには価格だけではない、と思いますよ。
    でも我々の場合は卸売業ですから、どこにでもある商品を
    扱っているんです。つまり、競合も同じような商品を売っ
    ているんですよ。だったら価格で勝負するしかないじゃな
    いですか。宝石店で観光客に衝動買いで買ってもらうのと
    はワケが違うんです。

 
確かに卸売業の場合は、そういうことも言えるでしょう。
どこにでもある商品について価格提示をしても、
「他の会社では○○円安いよ」と言われればそれまでですから。
また、仕入れとはいっても商品力を高める努力をしてこなかったとすれば、
商品戦略上の問題もあるかもしれません。

でも、それが全てではありません。
営業マンが成長するためには、他責にしないことが重要です。
売れない理由を価格だけのせいにした時点で、
自分の営業力向上の可能性を捨てていることになるのです。

このことにB君は気づくべきではないでしょうか。

私は、彼のような営業マンには、以下のようなやりとりをします。


■価格にこだわるB君との会話


私 :じゃあ、卸売業の商品って、卸売りする商品そのものだけなんで
   しょうか?
   例えば、御社のデリバリーは他社にない体制を取っていませんか。
   納入顧客の実績はどうですか?
   あなたの営業マンとしての信頼感は?
   他社にないこまめな対応や、もしものときの対応は?
   新商品の中には他社にない特長を持ったものがないですか?
   顧客への情報提供は?
   それに、お客様の状況をよく聞きだして、
   その状況にぴったり合った提案はできていますか?

B君:全部じゃないけど、そんなことくらい言ってますよ。
   デリバリーはウチなりのハイスピード配送をやってるとか、
   大手企業にもたくさん納入実績がありますとか。

私 :なるほど言っているのですね。
でも全部は言わないまでも、 卸売業はこういうことのトータルで

   商品力が形成されるのですよ。

   では、あなたの言っていることは、どれだけお客様に伝わって
   いるのでしょう?
 
B君:自分なりに一生懸命やってますよ。

私 :そうですよね。
   でも聞きたいのは一生懸命やってるかどうかではないんです。
   例えばどんな説明の仕方をしたのですか?
   ちょっとここで説明してみてください。

B君:(しぶしぶ簡単なロープレをやってみせる。
    しかしその内容は、「当社はスグ配送しますから」程度の
    事実を述べただけのトークに過ぎない)

私 :なるほど、でもそれじゃぁ聞き手は納得しないですよ。
   口頭で簡単に説明しているだけですから。
   他人に理解いただく、ということはそれほど簡単なことでは
   ありません。
   そのお客様には、例えば現在取引している卸売業者のデリバリーが
   遅れて、大変なことになった経験があるか聞き出していますか?
   ・・・そこまでは聞いていないのですね。
   もしお客様にそういう経験があれば、当社ならその場合は
   こういう体制になっているのでこう対応するという
   お客様の事情に合った説得力の高い説明 ができるはずです。

   また、大手企業への納入実績は
   「たくさん大手企業に納入しています」と言ったのですか?
   それとも企業名をあげて伝えたのですか。

B君:大手企業2〜3社の企業名をあげました。

私 :なるほど。でも、やはりそれじゃ大して説得力ないですよね。
   大手企業の納入実績を伝える目的は、お客様に御社の信頼性を
   理解して欲しいからでしょう?
   2〜3社の大手企業の社名を聞いただけで、「おお、だったら
   御社は信頼できるねぇ」なんて言ってくれますか?
   言ってくれないでしょう?
   だから、 あなたはもっと臨場感を持って、なぜ大手企業が

   あなたの会社を選んだのか説明できないといけない
んですよ。

   そのためには、実際に何社かの大手企業を担当している先輩社員
   に同行させてもらうのが一番手っ取り早い。
   そして、その大手企業の担当者に直接「なぜ数ある会社の中から
   当社を選んでいただいたのでしょう?」と聞いたらいいんです。
   聞き出した情報をもとに、あなたのトークやツールに工夫を
   加えて説明できるようにならないと、お客様は理解しないの
   ではないですか?


■値引きされる要因


この会話から、B君はおざなりの商品説明と実績紹介などをして、
価格を提示していただけだということがわかります。
一言で言えば、 見積もり営業をしていたに過ぎません。

 
更に、冒頭であげた「自信を持って価格提示する」という件は、
それだけでは失敗することが多いんです。
見積もり営業をしている営業マンが自信を持って価格提示しても、
「あっ、そ。じゃぁいいや。ご苦労さん。帰っていいよ」
などと言われかねないからです。
 
そう、値引きされることが多い営業マンは、
営業活動のどこかに問題を抱えているものなのです。

そもそも、できる営業マンは値引きが少ないものですよね。

だから営業マンは、お客様がうなるような納得のさせ方を
常に工夫しなければいけません。
もしあなたが、しょっちゅうお客様から値引き交渉をされるなら、
商品力を嘆く前に自分の営業方法を振り返りましょう。

現代は様々な企業が品質の高い商品を扱っています。
だから、商品力自体は競合と比べて大差なく、
横並びであることが多いものです。
でも、ホントの商品力は、製品力+営業マン力なのです。

価格を左右する要因は、値引きされるときもされないときも
商品だけではなく、営業マン自身が作り出しているものなのです。
 
あなたの工夫次第で、
値引きを少なくすることが必ずできるはずですよ。


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次回は、
 
    「取りつくろわず、本音で勝負!」
 
というテーマでお送りいたします。
お楽しみに。

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発行:株式会社ジェイック   http://www.jaic-g.com/
バックナンバーはこちら
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